平成22からスタートする厚生労働科学研究
第3次対がん総合戦略研究事業
―癌医療におけるグレリンの包括的QOL改善療法の開発研究―
■事業の概要 ・概要・共同研究態勢
■事業について ・グレリンとは?・事業の目的・事業の意義・これまでの業績
■患者さん向け
【概要】
癌は我が国における死因のトップとなって久しく、人口の高齢化に伴って今後も患者さんの数が増えていくと考えられます。癌を発見する検査技術の進歩は著しいものですが、進行期で発見されたり、手術などによる根治が困難な状況で診断がつく患者さん方は非常に多く、その数は確実に増えています。このような患者さん方にとって、抗癌剤治療による食欲喪失や栄養状態の悪化、全身倦怠、末梢神経や消化管運動の障害などは、生活の質
(Quality of Life, QOL)を低下させるとともに治療中断にも直結し、有効な治療法に乏しく、新たな治療法の確立が望まれています。
グレリンは胃で産生される食欲亢進ホルモンでエネルギー蓄積、抗炎症、心血管保護などの作用があります。ヒトグレリンをカヘキシアのある患者さんへ経静脈的に投与すると、食欲や栄養状態、運動耐容能の改善、筋力増強、抗炎症によりQOLが向上することが解明されてきました。
このようにグレリンは、癌自体あるいは癌治療による食欲低下やカへキシア、全身倦怠、消化管や末梢神経の機能障害などに対する新規治療薬としての実用化が期待されています。

【グレリンとは】
グレリンは1999年にラットおよびヒトの胃からオーファン受容体GHS-R(growth hormone secretagogue
receptor:成長ホルモン放出促進因子受容体)の内因性リガンドとして発見された強力な成長ホルモン(GH)分泌促進活性をもつペプチドです。28
個のアミノ酸からなり、3番目のSer残基の側鎖が脂肪酸であるn-オクタン酸によってアシル化修飾を受けており、この脂肪酸修飾が活性発現に必須である
という極めてユニークな構造をしています。
GHは、筋肉と骨量を増加し、また脂肪分解を促進して、健康の維持・増進さらには老化の抑制に重要な役割を担っています。高齢者におけるGHの分泌低下
は、ソマトポーズとよばれ、筋肉と骨量の低下および内臓脂肪蓄積型肥満などをもたらし、生活の質の低下を引き起こします。老化現象として知られる骨・筋肉
量の低下、エネルギー代謝障害、心肺機能の低下あるいは免疫能低下などは、グレリン作用の減弱と密接に関連していることが推定されます。
グレリンは、下垂体からのGH分泌の促進だけでなく、摂食亢進、エネルギー代謝、抗炎症、交感神経抑制、心血管保護など多彩な生体調節機能を有している
ことが解明された。また、最近の動物モデルを用いた実験結果から、グレリンが、皮膚や骨格筋、脊髄神経細胞の増殖、肝グリコーゲン貯蔵、膵β細胞に対する
アポトーシス抑制などの作用を有していることが解明され、これらの新たに発見された生理作用によるグレリンの臨床応用が期待されています。

【事業の意義】
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本事業は以下の点で、これまでにはない独創性を有しています。 |
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(1) |
ヒトの体内に存在する生理活性物質を呼吸器疾患の治療に応用します。 これまでに内在性物質を呼吸器疾患の治療に応用する医療はありません。内在性の物質を用いるため抗原性の獲得がないことで安全性の確保が期待されます。 |
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(2) |
わが国の基礎研究成果をわが国の研究者が臨床研究へ展開する「橋渡し研究」を実践し、日本発の探索医療・展開医療のモデルを創生します。
現在日本では、治験・臨床研究の推進や産学連携によるシーズの医療応用が国家的事業として求められています。本事業は、自らのシーズを、自らの研究チーム
による臨床試験で、自ら産業化することにより、展開医療のモデルになることが期待されます。 |
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(3) |
抗癌剤化学療法により栄養・全身状態の低下した患者さんに対して、これまでにはない全く異なった観点からの治療手法を開発することにより、癌の患者さんが増えていく高齢化社会のわが国の医療へ貢献できます。
わが国では人口高齢化と診断技術の進歩・普及により、癌患者の数は確実に増えています。本事業はわが国における癌患者さん方の「生活の質」の改善と医療経済に貢献できると確信しています。 |
【これまでの業績】
グレリン関連論文【pdfダウンロード 64k】
本事業で実施されるのは既存の治療ではなく、新たに体の中から発見された物質を用いた臨床試験です。現在実践している医療は、先人たちの臨床試験の蓄積
により成り立っています。私どもは、科学的な根拠に基づき作成され、倫理性・安全性が十分確保された臨床試験を実施することにより、質の高い医療エビデンスを確立し、難治性の呼吸器疾患の治療法を開発したいと考えています。
グレリンの投与により食欲や体重の増加による栄養状態の改善、全身状態の改善が期待できます。 ご興味のある患者さんはご遠慮なくお問い合わせ下さい。

宮崎大学医学部附属病院第三内科 松元 信弘
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