HOME > 医師の方へ > 平成20年度〜厚生労働科学研究 医療技術実用化総合研究研究事業について
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平成20年〜22年度 厚生労働科学研究 医療技術実用化総合研究 採択事業
―慢性呼吸不全患者に対するグレリン投与の臨床効果の探索的研究―


■事業の概要 ・概要・共同研究態勢
■事業について ・グレリンとは?・事業の目的・事業の意義・これまでの業績
■患者さん向け


 事業の概要

【概要】
 
慢性呼吸不全は、持続する低酸素血症のため日常の活動に支障が生じる病態です。慢性呼吸不全に対する治療として呼吸リハビリテーションや在宅酸素療法が実施されていますが、病態の進行により栄養障害や呼吸筋疲弊、慢性心不全をきたし、さらに日常生活の制限を齎します。わが国で在宅酸素療法を既に実施している患者数は約12万人に達しており、慢性呼吸不全の予備群である慢性閉塞性肺疾患、肺結核後遺症、気管支拡張症などの患者数も多いことから、慢性呼吸不全の病態を改善させる新たな治療法の開発が期待されています。
 グレリンは胃で産生される食欲亢進ホルモンでエネルギー蓄積、抗炎症、心血管保護などの作用があります。ヒトグレリンを経静脈的に投与すると、栄養状態、心機能、運動耐容能や筋疲労を改善することが解明されてきました。これまでの臨床研究の結果から、慢性呼吸器疾患患者に対するグレリンの臨床的有効性は予測されますが、多彩な基礎疾患から構成される慢性呼吸不全に対してグレリンが均一の有効性を示すか否かは不明です。
 本研究では、慢性呼吸不全患者にとって、グレリン投与が有効であるか否かを探索的に検討し、臨床的に有効と考えられる至適容量、基礎疾患の選択や効能を確認してグレリン治療のエビデンスを構築したいと考えています。



【共同研究態勢】
 本研究における臨床試験は宮崎大学医学部附属病院が中心となり、奈良県立医科大学医学部附属病院、独立行政法人国立病院機構刀根山病院、の3施設で分担して実施されます。慢性呼吸不全、慢性閉塞性肺疾患、慢性下気道感染症の3つの病態・疾患を対象として、探索的研究および検証を3年間で実施する予定です。
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 事業について

【グレリンとは】
 グレリンは1999年にラットおよびヒトの胃からオーファン受容体GHS-R(growth hormone secretagogue receptor:成長ホルモン放出促進因子受容体)の内因性リガンドとして発見された強力な成長ホルモン(GH)分泌促進活性をもつペプチドです。28個のアミノ酸からなり、3番目のSer残基の側鎖が脂肪酸であるn-オクタン酸によってアシル化修飾を受けており、この脂肪酸修飾が活性発現に必須であるという極めてユニークな構造をしています。
  GHは、筋肉と骨量を増加し、また脂肪分解を促進して、健康の維持・増進さらには老化の抑制に重要な役割を担っています。高齢者におけるGHの分泌低下は、ソマトポーズとよばれ、筋肉と骨量の低下および内臓脂肪蓄積型肥満などをもたらし、生活の質の低下を引き起こします。老化現象として知られる骨・筋肉量の低下、エネルギー代謝障害、心肺機能の低下あるいは免疫能低下などは、グレリン作用の減弱と密接に関連していることが推定されます。
 グレリンは、下垂体からのGH分泌の促進だけでなく、摂食亢進、エネルギー代謝、抗炎症、交感神経抑制、心血管保護など多彩な生体調節機能を有していることが解明された。また、最近の動物モデルを用いた実験結果から、グレリンが、皮膚や骨格筋、脊髄神経細胞の増殖、肝グリコーゲン貯蔵、膵β細胞に対するアポトーシス抑制などの作用を有していることが解明され、これらの新たに発見された生理作用によるグレリンの臨床応用が期待されています。


【事業の意義】
   本事業は以下の点で、これまでにはない独創性を有しています。
(1)

ヒトの体内に存在する生理活性物質を呼吸器疾患の治療に応用する。 これまでに内在性物質を呼吸器疾患の治療に応用する医療はありません。内在性の物質を用いるため抗原性の獲得がないことで安全性の確保が期待されます。

(2)

わが国の基礎研究成果をわが国の研究者が臨床研究へ展開する「橋渡し研究」を実践し、日本発の探索医療・展開医療のモデルを創生する。 現在日本では、治験・臨床研究の推進や産学連携によるシーズの医療応用が国家的事業として求められています。本事業は、自らのシーズを、自らの研究チームによる臨床試験で、自ら産業化することにより、展開医療のモデルになることが期待されます。

(3)

高齢者に多くみられる難治性呼吸器疾患に対して、これまでにはない全く異なった観点からの治療手法を開発することにより、高齢化社会のわが国の医療へ貢献できます。 わが国は急速な高齢化社会を迎えています。高齢者の生活の質を向上させることは急務と考えられます。本事業は対象患者の絶対数が多いことに加えて、高齢者が殆どであることから、わが国における高齢者の「生活の質」の改善と医療経済に貢献できると確信しています。


【これまでの業績】
 グレリン関連論文【pdfダウンロード 64k】
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 患者さんへ

 本事業で実施されるのは既存の治療ではなく、新たに体の中から発見された物質を用いた臨床試験です。現在実践している医療は、先人たちの臨床試験の蓄積により成り立っています。私どもは、科学的な根拠に基づき作成され、倫理性・安全性が十分確保された臨床試験を実施することにより、質の高い医療エビデンスを確立し、難治性の呼吸器疾患の治療法を開発したいと考えています。 本事業で対象としているのは

・ 慢性呼吸不全
・ 慢性閉塞性肺疾患
・ 慢性下気道感染症 の3つの疾患です。

  グレリンの投与により食欲や体重の増加による栄養状態の改善、運動耐容能(運動に耐えることができる身体能力)の向上が期待できます。 ご興味のある患者さんはご遠慮なくお問い合わせ下さい。


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宮崎大学医学部附属病院第三内科   松元 信弘

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